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「谷口宗彦最終講義」出版

  • 2014.7.27
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2014年7月27日、NICHE出版会では谷口宗彦先生の本を出版しました。
「谷口宗彦最終講義 工学院大学に在籍した49年間の全てを語る」
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工学院大学から生え抜きの教授となり、
多くの学生たちに建築とデザインを指南した谷口先生。
あまたのコンペに挑み、新宿超高層キャンパスを手掛け、
施主とまちなみを思いやる、熱き魂がここにある。

編者:谷口先生記念出版会
単行本: 244ページ
発行:工学大学建築学部同窓会NICHE出版会
発売: 株式会社ATELIER OPA
定価:1800円+税
サイズ:21.2 x 15 x 1.8 cm
ISBN-10: 978-4-907469-01-6
発売日: 2014/7/27

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目次
0 はじめに(澤崎宏)
1 夢を次代に託して(谷口宗彦)
49年間のはじまり/人生のスタートライン/恩師山下先生との出会い/プロフェッサー・アーキテクト/恩師に奨められて教員に、そして多数のコンペに/未完の作品から学んだこと 恩師のコンペに対する姿勢と自らの実践/思い出の住宅建築/建築は己を映す鏡/葛西沖小中学校の設計競技を通して経験したもの/区長への提言/日経アーキテクチュアの不意打ち/マスコミの評価/総工費13億円を超える小学校の設計/建築教育の志/使命を背負って教壇に立つ/建築入門五箇条/私自身を鏡に映す「授業アンケート」/恒例の海外視察旅行/夏のゼミ合宿の楽しさ/日本でいちばん美しい町並/あの頃、みんな若かった!/ひたむきな向学心と声の大きさで周囲を圧倒 (田野邊幸裕)/四十年前の「邂逅」をたどって!(楠昭)/谷口先生とともに(高木雅之)/ふっと思い出す時(大場光博)/ライフワークとなった「輝かしき先輩たち」(類洲環)/夢見る力(赤川政由)
2 超高層大学建設秘話(谷口宗彦)
たった一人の証言者/再開発に着手するまで/KDN委員会と空中権譲渡という発想/290億円の発想はアメリカ生まれ/再開発プランと最初の疑問/納得できない有効利用可能床面積と配置計画/北郷薫学長からの回答/有効面積不足で各学科から不満続出/評議員会と教授総会での激論/大学倒産の危機感走る/松浦隼雄先生との出会い/一期工事減額交渉とゾーニング改善/開発本部、事務局専門主幹として実現したこと/重責から開放されたとたん救急入院/工学院大学の大恩人、松浦先生/伊藤鄭爾先生の功績を振り返る/超高層大学再開発工事にまつわる不正事件/地下改修工事により、上梓を決意/夢を次代に託して/超高層大学建設外伝/暗中模索のなかで(茅原健)/超高層再開発の危機を救う(船越康弘)/新宿校地再開発の今後の問題(北澤興一)
3 作品集(谷口宗彦)
囲み型の住宅プランと「まちにわ」/作品データ 1977‐2006
4 おわりに
「谷口宗彦最終講義」の出版に寄せて(鯵坂誠之)/感謝の気持(谷口宗彦)
/山下研究室・谷口研究室卒業生名簿/谷口宗彦プロフィール

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谷口 宗彦 (たにぐち むねひこ)
1946年 山梨県出身
1965年 福岡県立門司高等学校卒業
1969年 工学院大学工学部建築学科卒業
1971年 工学院大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了
1971年 工学院大学工学部建築学科助手
1985年 工学院大学工学部建築学科専任講師
1990年 工学院大学工学部建築学科助教授
1997年 工学院大学工学部建築学科教授
2004年 工学院大学大学院 博士課程 教授
2011年 工学院大学建築学部建築デザイン学科 教授
2014年 工学院大学建築学部退職

解説
本書は、2014年3月に工学院大学建築学部の教授を退職された谷口宗彦先生が、これまでを振り返り、次世代の後輩のために上梓した記録史です。

谷口先生は工学院大学建築学科を卒業後、山下司研究室で助手を務められ、谷口研究室を構えてからは助教授、教授として教鞭を取ってきました。同時に国内外のコンペに参加し、多数の公共建築や住宅を建ててきました。完成した建築作品のみならず、未完の作品からも学ぶことがある、と谷口先生は説きます。恩師からは「飽くなきチャレンジ精神、粘り強い姿勢、そして最後の最後まで空間デザインにこだわる創造性」を、そして両親からは「人に受けた恩を忘れずに返していく喜び」を教わったと谷口先生は記しています。その結果、学生たちは授業やゼミを通じて先生から建築デザインを学ぶ一方で、夏の山登りに挑み、ひたむきさに見合う体力を養わなくてはなりませんでした。本書の前半では、コンペに提出した模型写真や提出プランの解説に加え、親交のあった卒業生の方々の寄稿文をまとめ、谷口先生の教育者としての一面を浮き彫りにしています。

後半では、新宿に超高層キャンパスが完成するまでの紆余曲折を記録しています。1980年に新宿に校舎を建て直す事業が発足してまもなく、時代はバブルに突入します。土地、物価、人件費の上昇から総工費が膨らむなか、果たして290億円で新校舎は無事に完成するのでしょうか。特定街区としての再開発、学内のゾーニング、建築と経営の見直しについて先陣を切って果敢に挑むストレスから、谷口先生は緊急入院を余儀なくされます。退院してもなお、竣工に向けて邁進する姿勢には、母校の新キャンパスをより良いものにしたいという、岩をも通す一念が感じられます。章末の関係者の寄稿文でも、新宿の高層ビル群の一角を成す工学院大学の開発に秘められた歴史が明らかになります。

本書の最後では谷口先生が手掛けた主な建築作品を紹介しています。まちなみをテーマにした7つの住宅からは、過密化の進む現代において、通りと中庭を結びつけたコ-トハウスが魅力的で豊かな空間を作り出すことを示しています。

この一冊には教育者として若者と向き合い、公共建築の建築家として責任と向き合い、高齢者や障碍者の住宅の設計者として施主と向き合った49年間の実りある日々がまとめられています。「建築は己を映す鏡である」として信念を貫いた谷口先生の生き方を知ると、読者はおのずと自分の内なる鏡にも光がともることに気づくのではないでしょうか。(NICHE編集部)

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工学院大学後援会役員だった方が、はてなダイアリーに本書の感想をつづられています。
谷口宗彦最終講義 -ムイカリエンテへの道-

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